Pathological love

「全部私の所為だ…………。」


俯いて膝に置かれた手を見ると、どんどんと視界が滲み始める。

堪えようと固く握る拳が震えている。


「水川さん……大丈夫ですか?」


若い女の子の声に、咄嗟に震える拳を後ろ手に隠した。


「……あ、はい。大丈夫です!」


「少しお話いいですか?」


「はい……どうぞ。あなたはこの前の……」


「はい!看護師の小林 優(こばやし ゆう)と申します!水川さんとは何度かお話しさせて頂いてます!」


「そうなんですか…………お世話になってます。」


初々しく元気の良い彼女を見ていると、自分が置かれている現実とのギャップの大きさに気付かされる。


「あの……私が言うのも失礼かも知れませんが、娘さんの事、ずっと心配してました。私が話し掛けても殆ど返事くらいなのに、娘さんの話の時だけは色々話してくれました。」


「えっ?……母が?」


「はい……久し振りに会ったあの日も、本当は嬉しかったみたいですよ?怒った風に話してましたけど、何となく私にはそうゆう風に聞こえました。」


「そう……ですか。多分母は、私に呆れてたんだと思うんです……きっとそう。」


「いや、でも!!水川さんは私にー」


話の途中でバタバタと廊下を走って行く音が聞こえて、目の前を担当医が小走りに通り過ぎて行く。

ゾクッと嫌な予感が走る。


「お母さん……!!」


私は無我夢中で病室へと向かった。

邪魔なスリッパを蹴飛ばして走っていると、遠くに外邑さんが飛び出して来た。


「外邑さんっ!!」


「令子ちゃんっ!!お母さんがっ!!」





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