Pathological love
あの日から令子と会わなくなって1ヶ月が過ぎていた。
あの日、ホスピスに駆け付けた俺は令子の母親が亡くなった事を外邑さんから聞かされた。
彼女が心配で病室へと向おうとしたが、直ぐ様外邑さんに止められてしまった。
「誰にも会いたくないと彼女が言っているから、ごめんなさいね?」
その後も何度も掛け合って貰ったけれど、結局彼女の顔を見る事は出来なかった。
帰り掛けに外邑さんに言われた一言が、俺の胸に重く伸し掛る。
「令子ちゃんの婚約者じゃなかったんですね?私はすっかりそうなんだと思って…………何があったのか分かりませんけど、令子ちゃんを大事に思ってるなら、ちゃんとしっかり彼女に会う資格を持って訪ねてください。私の言っている意味分かりますよね?」
「はい………………。」
俺には片付けなくてはならない事がある。
それを精算しなければ彼女の元に行く事は出来ない。
資格すら持ち合わせていないのだ。
俺は一つの決意を胸に帰宅の途に着いた。
事務所に戻ると、直ぐに第二弾の白精堂のCMの打ち合わせが組まれていた。
「どこ行ってたんだよ!!打ち合わせ間に合わないかもしれないと思ってヒヤヒヤしてたよ。あー良かったぁ!」
「遅くなってごめんな。打ち合わせ始める前に、皆に話があるんだ。」
そんなに多くの社員が居るわけではないけれど、この目の前に居る社員達の生活が俺に掛かっている事は確かで、ちゃんと伝えなければいけない。