Pathological love
薄暗い明け方、気怠くベットから上半身を起こすと煙草に火を点けた。
いそいそと身支度を整える背中を眺めながら深く吸い上げるとスーっとメンソールが染み渡った。
「…………もう、帰るんですか?忙しいですね。」
「あぁ、今日の休みは子供と約束しててね。必ず朝までには帰らないといけないんだ。すまないね。」
「いいえ。そんな風に家庭を大事にしてる所が好きなんです。」
「こんな事してるくせに、令子は矛盾してるな………。」
「不倫してると思ってませんから………私は斎藤さんの身体を、たまにお借りしてるだけです。心を貰ってる訳じゃありません。」
「そうはっきり言われると、何だか寂しいような気がするよ。」
「そんな事思ったことも無いくせに、よく言いますね?」
「フフッ………じゃあ、もう行くよ。またね。」
ベットに近づいて来た斎藤さんが顔を近づけると、私はわざと避けて首に軽く抱きついた。
「キスはしないって言ったでしょ?」
「やっぱりダメかぁ………ノリでしてくれるかなと思ったのに、残念。」
「いいから早く行ってください。家族サービスしっかりね!…………お父さん。」
「君までそんな呼び方………やめてくれよ。」
去り際にニッと笑うと斎藤さんはホテルの部屋から出ていった。
8歳年上のダンディーな紳士風の彼は斎藤 嵩迪(さいとう たかみち)さん。
会社を経営してるらしいけど、詳しいことは探り合わないルールだ。
数年前に行きつけのバーで意気投合して以来だから、結構長く続いている。
たまに会ってSEXをする、お互い割り切った関係。
許されない事だって十分わかってる。
分かってるけど、いい歳して一人で性欲を満たしてなんていられない。