Pathological love

「第一弾のCMとイベント、大成功に終われたのは皆のお陰だ。本当に感謝している。本当にありがとう。」


「何だよ急に、変な奴だな。」


「本当に秋山くんらしくないね。どうかしたの?」


察しのいい2人の営業コンビが俺の言葉に反応した。


「第二弾のCMだけど、俺の好きな様にさせて欲しい。それで、もしかしたら白精堂の契約を切られるかも知れない。それでも、造りたい作品があるんだ。俺の中ではそれしか考えられない。」


暫くの沈黙の中、美島は隣に目配せをすると、それを受けて、仲井が話し出した。


「そんな予感がしてたんだ……。契約切られるのは残念だけど、お前の作品は弄られたくない。それだけは契約の第一条件として俺達営業は仕事してるつもりだ。」


「そうよ。あなたの作品じゃ無くなったら、ここのデザイン事務所は意味の無いものになってしまうのよ?」


2人の言葉に他の社員達も口々に同意してくれた。


「俺のわがままに付き合って迷惑掛けると思うけど、皆に恥じない様なモノを必ず造るから!!」


「わがままって……今更だろ?」


社員の皆の了解も得て、俺はいよいよ決心を固くした。







マンションへの帰り道、俺は令子の事を思い出していた。

この道、何度も一緒に歩いた。

夜中に迎えに来て、腰抜かした彼女をおぶって帰った。

背中に感じた彼女の体温は今も昨日の事の様に覚えている。

ハイヒールを脱いだ小さな足をブラブラさせながら、俺の背中に寄り添っていたっけ。

あの時、令子はどんな顔をしていたのだろう。

懐かしくて、恋しい思いが胸の中にいっぱいになった。



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