Pathological love
最終チェックをした俺はデータをUSBに保存した。
2個の同じUSBを両手に分けて握る。
最後まで悩んだ二つの選択肢、覚悟を決めていた筈なのに、俺の手は微かに震えていた。
この二つの内一つを選べは、もう後には引けなくなる。
(ビビってんのか……?)
「あの、秋山さん……ちょっといいですか?」
振り向くと新人の山内 旬(やまうち しゅん)が立っていた。
いつもの人懐っこい笑顔は消え失せ、見るからに真剣な面持ちで俺を見ている。
察しはもう、付いていた。
「今回の決定事項ですが……俺は本当は反対です!!馬鹿げてると思いませんか?そんな事したら、秋山さんが業界から干されかねません!!秋山さんはそれでいいんですか!!俺は絶対嫌です!!秋山さんは俺の理想なんです!!……生意気いいましたけど、皆さんも本当はそう思っていると思います……考え直して下さい。」
旬の握り締めた拳が微かに震えている。
「旬……。」
俺の答えも聞かず、旬は言うだけ言うと頭を下げて帰って行った。
「旬……ごめんな……。」
掌のUSBを机の上に並べると、俺は立ち上がった。
「秋山!山川さんそろそろ着くぞ!準備はいいか?」
「あぁ……。」
「秋山~……その格好はなんだよ。一回着替えて来い。」
仲井に言われて、自分を返り見ると、クタクタのシャツが目に入った。
「あー……わかった。着替えて来る。」
「ビシッとしろよ!」
「分かってるって。」