Pathological love
間宮印刷の山川さんは、俺を見るとパッといつもの隙の無い笑顔を浮かべて会釈をした。
「お疲れ様です秋山さん!仕上がった様ですね?」
「はい……。」
「どうしましたか?何か浮かない顔の様ですが?」
「いえ……取り敢えず、仕上がった物を見て欲しいんですが……。」
「ええ!勿論!!」
個室の電気を消してブラインドを下ろし暗幕を締めると、昼間なのに真っ暗になる。
目の前のスクリーンに目をやると、出来上がったばかりの映像が流れ始めた。
横目で山川さんを、盗み見るとスクリーンのライトに照らされた顔は、さっきの笑顔とは反対に真剣な眼差しと変わっていた。
今までどんなコンペでも、ここまで緊張した事は無い。
こんなに怖くて自信が消えそうになった事は無かった。
きっと今の俺には守るべきモノが増えたからなのだろう。
短い試写を終え、お互い向き合うと、山川さんが喋り出した。
「第1弾のCMの続きはこうなっていたんですね?……この妖精の様な女性……とても綺麗ですね……再生とゆうか蘇生とゆうか、今回の自然派化粧品にはとてもよくマッチングしていますね!これなら上も通るでしょう。」
「ありがとうございます。俺の理想が詰まっているんです。」
一緒に試写を見ていた旬に視線をやると、俯いたままで目を合わす事が出来なかった。
俺は心で謝りながら山川さんに向き直った。
「そうですか……この女性……………………いや、それじゃあ早速、ゴーサインが出ましたらこれを元に全ての指示を出しますので、確かに受取りました。」