Pathological love
「いやー、良くやってくれたよー!!CMのお陰で商品の売れ行きが、今までに無い数字を叩き出してるよ!!秋山くん!素晴らしい!!」
白精堂本社ビルの最上階。
広い社長室に呼ばれた俺と営業の仲井は、上機嫌な社長からのお褒めの言葉を受けていた。
「秋山くん!!仕事も一段落したし、この辺で娘の美鈴との話をそろそろ考えてくれないか?君もこの仕事でかなり名を上げただろう?うちの娘に相応しいし、私も君を大いに気に入っているんだ?どうだ?結婚を前提にー」
俺は社長の言葉が終わる前に立ち上がった。
「新嶋社長、正直にお話します。私には婚約者がいます。」
「何だと!?どう言う事だ!!娘に気を持たせるような口振りだったじゃないか……騙したのか?」
隣で座って居る仲井の手に、少し力が入るのが見えた。
一瞬躊躇する気持ちが芽生えた瞬間、仲井が立ち上がった。
「新嶋社長!!すいません!!私の所為なんです!!私が契約の為に無理やり口止めしたんです!!責任は全部私に!!」
新嶋社長は俺達を睨んだまま黙っている。
「本当の事を話します。発端は仲井ですが、仕事欲しさに承諾したのは俺です。仕事している間にその婚約者とは距離を置く事になって、一時は美鈴さんとの交際を本気で考えました……でも、やっと気づいたんです。このCMが完成したのも、彼女が居たからなんです。私の全てを良い方向に導いてくれた……もう、彼女じゃないと駄目なんです。彼女が居ないと俺からは何も生まれて来ません。今回の契約料は、頂かなくて結構です。娘さんを傷つけてしまい本当に……申し訳ありませんでした。」