Pathological love
彼女のヒステリックな金切り声が響くと、全てを吐き出すのを待っていたかの様に、ギィっと椅子の軋む音がして新嶋社長が喋り出した。
「フフッ…………ぬけぬけとよく私に言ったもんだ……、美鈴もう十分話したか?」
「え?パパ……?」
「契約料は要らないだと?!見くびるな!!私を誰だと思っている?娘の事は大事だが、その前に私はこの会社の社長なんだ。プライベートとビジネスはきっちり分ける。君のした事には腹は立つが、君の仕事は……君の作品には一目置いているんだよ……契約料は払う。」
「新嶋社長、本当ですか!!ありがとうございます!!
」
仲井がいち早く反応して、新嶋社長に応えた。
「パパっ?!どうして!!私はまだ許してないわ!!」
「美鈴、お前は今回の仕事に参加すると言っていたくせに、殆ど打ち合わせにも参加せず遊んでいたな?CMだっていち早く確認出来る立場に居ながら今頃気づくなぞ、全く情けない。今までは娘可愛さに、お前の男遊びも見て見ぬ振りをして来たが、付き合うのはこれで最後だ。」
「そんな……パパぁ~……」
「秋山……良かったなー……。」
仲井は小声で俺にそう伝えると、少し瞳に涙を滲ませながら俺の肩をグッと掴んだ。
「……私の作品を認めて頂いて……心から……感謝します……。」
「今日は気分が悪い。もう、帰ってくれ。」
「はい!失礼します!……秋山、行くぞ!!」
「あぁ……。」
踵を返し、広い社長室を退出しようと歩き出した時、背中の方から低い声が俺達の背中を押した。
「親心で暫くは無理だが、機会があったらまた君と仕事をしたいものだ。」
俺は滲む視界を拭って振り返ると、深く頭を下げた。