Pathological love
色とりどりの花が咲き乱れる室内。
冬の陽射しも暖かく感じられるここは、まるで天国の庭の様だ。
ホスピスの温室の掃除と水やりは、看護師が順番で担当する。
皆は広い温室の当番を嫌がるけれど、私はその逆で自分の当番を心待ちにしていた。
「優ちゃん、ここ水やった?」
「はい!後はこっちだけです!!」
「優ちゃん楽しそうね?ここがそんなに好き?」
「はい!大好きです!!よく患者さんとも来ますしー」
途中迄話して、私は不意に水川八重子さんを思い出した。
八重子さんもここがお気に入りだった。
「どうしたの?……優ちゃん?」
「ここ、よく八重子さんと来たなって……思い出して。」
「そうね……。」
「あれから令子さんはまだ?」
「ええ……心配だから家に連れて来たけど、すっかり気力を失ってしまって……私もなんて言っていいか掛ける言葉が見つからないのよ。毎日お母さんからの手紙を読んでは独りで泣いてるみたい。」
「そう……ですか。」
外邑さんは、八重子さんのお葬式が終った後に心配になり、令子さんのマンションを訪ねて行った。
その時、憔悴し切った令子さんを目の当たりにし、放って置けずにそのまま連れて来ていた。
「最後の手紙読んでも、やっぱり立ち直れないんですね?」
「え?最後の手紙?」
「はい!亡くなる数日前に少しだけ意識が戻った時、たまたま私がお世話をしていて頼まれたんです。自分に何かあったら代わりに送ってくれって、それで送ったんですけど……?」