Pathological love
「おかしいわね……確か、新しい消印の手紙は無かった筈だわ……もしかしたらまだマンションに残っているのかも。私、今度の日曜日休みだからちょっと行ってくるわ!令子ちゃんが気力を取り戻す切っ掛けになるかも。」
「そ、そうですね!!」
自分の気の利かなさに少し落胆しながらも、外邑さんの喜んでいる姿に少し希望が見えた気がした。
「ささ!ちゃっちゃと水掛け終らせてしまいましょ!!」
「はい!」
外邑さんがシャワーホースを掴んだ時だった。
携帯の着信が鳴り響いた。
「あら、誰かしら?……………………優ちゃん、ちょっとごめんね。」
外邑さんは着信画面を見るなり、少し目を見開いて温室から小走りで出て行った。
「誰からだろ?」
気にはなったけれど、私はやり掛けの水やりを終わらせる事に専念した。
暫くして外邑さんが戻って来る顔が見えた。
先程よりニコニコと嬉しそうだ。
「令子ちゃんのマンション行かなくてすんだわ!」
「え?どうして……?」
「ねぇ、優ちゃん。今度の日曜日、温室のメンテナンス入るわよね?何時からだっけ?」
「あ、はい!確か……午前中には終わると思いますけど……?」
「そう!それじゃあ、その後ここに令子ちゃん連れて来たいんだけど優ちゃんも付き合ってくれない?予定あるならいいんだけど?」
「いえ!大丈夫です!たまには気分転換も必要ですもんね!!」
「えぇ……きっと素敵な事が起こるわ。」
「え?」
「フフッさぁ、戻りましょ!!今日も1日頑張らなくちゃ!!」
「え?あ、はい!!」
今一状況が掴めなかったけれど、私は切り替えて仕事に向かった。
八重子さんの最後の言葉……何を書いたのかは知らないけれど、絶対意味のあるものだと私は信じていた。