Pathological love
「それはハラミかな?そっちはせせり。美味しいでしょ?今、ハマってる焼き鳥屋さんでね、稀少部位もあるからおすすめ。」
昔から好きな食べ物はって聞かれたら、焼き鳥って答えてた。
今は外では、当たり障りのない食べ物を選んで言っている。
例えば………フルーツとか?
好きが講じて、愛猫2匹の名前もそれに関係している。
人に教えるわけでもないし、可愛い響きだし、結構気に入っている。
「よーし!焼酎も飲んじゃおうかなぁ~~。」
芋焼酎を入れたコップに、並々と水を注いだところでテーブルの上の携帯が鳴った。
「うぅーーこの音は…………やっぱり課長だぁ~………出たくない……。」
「はいはい、社畜さん。どーせ出るんでしょ?早く出ないと切れますよ?」
友に促されて、渋々画面をスライドさせた。
「はい!水川です!お疲れ様です!!」
私の急な変貌ぶりに、半分呆れ顔で友は焼き鳥に噛みついている。
私は上司に対しては、かなりのYESマンだ。
どんな事も大抵は断らない。
『水川くん。明日の会議の資料なんだけど、今すぐ持って来てくれないか?目を通しておきたいんだが………。』
(それなら共有フォルダに入っているんだけど………。)
「小森くんがその資料のデータを持っていると思うので…小森くんにー」
『小森?小森はもう帰ったよ。だから、君に電話したんだ。まだ、会社に居るんだろ?』
「え?………えぇ、まぁ…はい。」
『じゃあ、頼むよ。』
「はい………失礼します。」
相手が切れるのを待って、ゆっくり通話終了ボタンを押した。