Pathological love
「それに、なんで鍋なの?ダサいじゃん!!どうせならイタリアンがいい~!!この前、連れてってくれたお店にしよ?」
「あぁ………いいよ。」
何かが違う。
今一瞬、過った違和感が何なのか、俺はまだ分からないままにした。
「連理~!行こ!」
「うん。」
今はまだ、このままでいい。
まだ、このぬるま湯の中で漂っていたい。
「連理………こっち、ちょっとだけ…………。」
少女の様に甘えた声を出していた女は今はもう、女の顔をしている。
俺はこんな人間の本性を垣間見るのが好きだ。
そして、そ知らぬふりをして、その誘いに乗るのだ。
何かをするには、おあつらえ向きの人気の無い非常階段。
女は、発情した何かのように、身体ごと俺に絡み付いた。
「早く…キスして………。」
俺は女のあざとさごと抱き締めて、微笑む。
「勿論。」
これで愛が一つ貰えるなら、安いもんだ。