Pathological love
4. fast time
『帰りに生姜、買って来て。』
(生姜かぁ。生かな、それともチューブ?)
残業を終えて、帰り支度をしている時にメールが来た。
相手は勿論、婚約者の秋山 連理。
あれから私は大体、彼の家で夕食を頂く毎日を送っていた。
婚約の理由は不純かも知れないが、彼の料理は絶品だから、ついつい足を運んでしまう。
完全に胃袋を掴まれた私は、帰り際のお使いも、全く苦にならず手慣れたものになってきていた。
「水川主任、お先…失礼します!」
「お疲れ様。あっ美保ちゃん、たしか料理上手いよね?生姜使う時は、生?それともチューブのやつ使う?」
「えっ?水川主任が料理ですか?!」
「そんなに驚かないでよ…頼まれたの。」
「フフフッ………そうですよね!」
「そうですよねって………そんなに、あっさり納得しないでよ。」
今時の若者にしては珍しく、入社当時から真面目でハキハキとしていて、とても好感の持てる美保ちゃんは、私のお気に入りの部下だ。
今はチームが違うから、時間が合わなくて一緒に行動しないが、以前はよくご飯に行ったり、飲みに行ったりしていた。
笑顔でズバッと本質を突いてくる所も裏表が無くて、彼女を気に入っている理由の一つになっている。
「すいません水川主任。生姜ですよね?私は、色々な料理に使えるから、生の物を買いますね。刻んだりおろしたり、スライスしたり出来ますから。」
「なるほどね!生の買って行けば、まず間違いないわね。」
「もしかして、秋山さんに頼まれたんですか?」