Pathological love
「あぁ………うん…まあね。彼の方が料理上手いから。」
「のろけですか?幸せそうでいいですね!」
屈託のない笑顔で、その手の話題を振られると、何て言っていいのか分からなくて、私はいつも苦笑いを返していた。
婚約発表以来、女子社員からのアプローチも無くなったし、陰で噂される事も大分減った。
でも、その代わり妙に羨ましがられたり、からかわれたりするようになって、正直どうしたらいいのか困っている。
「いいから………もう行って!!」
「水川主任、照れてる~!!主任にも可愛い所あったんですね?それじゃあ、失礼します!」
律儀に頭を深く下げて、美保ちゃんは帰って行った。
「可愛い所くらい私にだってあるし…………幸せそう?…………私が?」
幸せってどんな気持ち?
仕事で契約取れた時とか、初めて表彰された時に嬉しかったあの気持ちだろうか?
どれも幸せに値しそうで、何かが違う気がする。
物心ついた時から、一度も幸せと口に出した事が無いのは、ただ単に、そうゆう状況になった事が無かっただけ。
「あっ!やばっ!待ってるんだった…急がなきゃ。」
私はバックを持つと、急ぎ足で家路についた。