Pathological love
『 おやすみ………連理。』
誰かが俺の頭を撫でて、そっと髪を梳く。
温かくて、いい匂いがして、安心させてくれる。
なんて気持ちいいんだ………。
ずっと、こうしていたい。
ずっと、こうして貰いたかった。
「…………さ………ん。」
こうあなたを最後に呼んだのは、何時だっただろう。
もう、戻ることの無いあなたの面影を、俺はずっと誰かに求めてこうなってしまったのか………。
この手の温かさだけを捜しているのに、どうして未だに手に入れられない。
手を伸ばせば、簡単に捕まえてしまえるあなたの手は、なんで温かく、こんなにも柔らかいのか?
夢かうつつかさ迷う中で、俺は確かな感触を手にした。
「……んん…。」
久し振りにぐっすり眠れた事に、少し驚いて目を開けると、薄暗いオフィスの天井が視界に写った。
「俺、寝ちゃってたのか………。」
起きようとグッと手に力を入れると、柔らかい感触が掌に伝わった。
「………えっ?」
見上げると、誰かが俺の胸と頭に手を置いて、ソファーにもたれて眠っていた。
ドクンッ………
顔が見えない………心臓が痛いくらい高鳴っていた。
久し振りに、あの夢を見たからだろうか…。
俺はそっと、その手の主を起こさないように起き上がった。
「………令…子?」
小さな寝息を立てて眠っている彼女は、いつもより小さく、頼り無げに見えた。
「…………………あぁ、そっか。寝る前、膝枕したんだっけ………フフッ………あんな夢見るなんて、足んなくなってきたかな………?」