Pathological love
「寂しい?」
「はい。だから最近、元気なかったんですね?」
元気なかった?私が?
美保ちゃんは美味しそうなスープを啜りながら、当然の様に私を見た。
「………今日は久し振りに、肉じゃがを伝授して貰うことになったんだ。」
「あぁ、だから今日は朝から嬉しそうなんですね?やっと、謎が解けました?」
「えっ?嬉しそうだった?」
「はい!!」
「ねぇ?………それって一課の皆、知ってること?」
「さぁ?どうでしょう?」
美保ちゃんは意味深な笑みを浮かべて、卵焼きをぱくっと放り込んだ。
(そんなに私って、恥ずかしい奴だったっけ………自分にがっかりするわ………。)
確かに連理と料理している時は、何だか楽しくて、最後に美味しいご飯を一緒に食べてる瞬間は、正に至福の時だ。
恐らく、幼少の頃から独りご飯が身に付いていた私だから、こんな普通の事が新鮮に感じるのだろう。
午後からはなるべく顔に出ない様に、私は気を引き締めた。
定時を過ぎ、残りの仕事に目処がついた所で、赤坂部長がオフィスに顔を出した。
「水川………ちょっと。」
同オフィスにある打ち合わせ用の個室に呼ばれ、ソファーに座ると、赤坂部長が喋り出した。
「みどり電機の広告デザインなんだが、どうしてもうちのデザイン部じゃなくて、外に頼みたいそうだ。結構粘ったみたいなんだが、どうしても譲れないらしい。」
「そうですか。…それで何処に頼みたいんですか?」
私の問いに、明らかに赤坂部長の眉間に皺が寄った。
「それが………、芦屋デザイン事務所なんだよ。」
「芦屋デザインですか………それは、ちょっと難しいんじゃないんですか?」