Pathological love

会社からの帰り道。

無理難題を与えられ、落胆しながらも、目先の約束に私は、浮かれていた。

会社で嫌な事があっても、美味しいものを食べれば、何だかんだで元気が出る。

今日も美味しいものを食べて、少し愚痴を聞いて貰えば、少しは頑張れる気がした。


「あ~お腹空いた~。」


少し冷たい空気に、大きく息を吸うと、夕飯のいい匂いが鼻をついた。


「いい匂い~……カレーかな?こっちは煮物っぽい。」


今まで気にもしなかった、夕飯時の街の香りが、私の心をくすぐった。

気がはやり、少し速足に歩いていると、バックの中の携帯が鳴った。


(また、何か足りないのかな?)


何の気なしにメールを開くと、相手はやはり連理だった。


“仕事で今日の約束ダメになったから、悪いけどまた今度。 連理”


「えっ………。」


予想外の内容に、一瞬どうしていいか分からなくなり、立ちすくんでしまう。

そこには意外な程ショックを受けている自分がいた。

歩いて来る人の波に軽くぶつかって、我に返ると、何だか無償に腹が立ってきた。


「何なの?こんな、ぎりぎりでドタキャンなんて!!前から約束してたのにっ!!もう、いい!!」


私は、その足で友の家へ向かうことにした。

あんまり頭に来たから、直ぐ様、大通りに出て、タクシーを捕まえた。

移動中、切り替えようと、仕事の事を考えようとしたけれど、やっぱり無駄な努力で、腹立たしいまま、窓の外の流れる景色を眺めていた。

その時、不意に見覚えのある顔が目に入った。


「えっ?………今の…?………すいません!!止めてください!!」



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