Pathological love
今まで彼をそんな目で見たことは無いのに、急に意識し出したのか、胸の鼓動がどんどん速くなって行くのを感じた。
「シャワー…浴びないの?」
絨毯の上を微かな音を立てて近づいてくる彼は、妖艶な雰囲気さえ感じられる。
何かの魔法にでも掛かったのか、私の体は石の様に動かなくなってしまった。
目の前に来て、私の横の髪を掻き上げると、耳元に囁いた。
「別にそのままでも、俺はいいけど………。」
その場で屈むと、いきなり私を抱き上げ、そのままベットに置いた。
「ちょっと…!!」
戸惑う私を組敷いて股がると、静かに私を見下ろし始めた。
今にも心臓が飛び出そうなシチュエーションに私は為す術も無いまま、見上げることしか出来ない。
冷めた様な目をしているとばかり思っていた彼の瞳は、何故か酷く寂しそうで、それが私を冷静にさせた。
「…………………どうして、そんなに寂しそうな目をするの?」
「…………………………寂しそうな目って………別にそんな目なんてしてないよ。」
「嘘。短い付き合いかも知れないけど、いつもと違う事くらいは分かるわ………。」
「………………………。」
「ごめん………私が言い過ぎたわ。あなたのプライベートに口を出し過ぎた。こうゆう割り切る事に慣れてる筈なのに、ごめんなさい。」
私の言葉に、より一層表情を歪めると、唸りながら連理は自分の頭をぐじゃぐじゃと掻いた。
「あぁ~…………………………………………違う…違うんだ。悪いのは俺の方。最近、思うように行かなくて、きっと、八つ当たり。思い通りに行かない事を人の所為にしてるんだ。…………ごめん。」