Pathological love

いつもの山川くんとは全く別人に見えて、私は困惑した。

ここまで、人の事に突っ込んで聞くタイプじゃないのに、笑顔はそのままに、言葉には棘があった。


「古風と思われるかも知れませんが、私達は、お互いに尊重し合ってるんです。お互いの理想の為に。」


(確かに、嘘は言ってない。)


「フフッそうですか!いやぁ~すいません!!少しきつく言い過ぎました。水川さんに対する気持ちを知りたかったので。僕の大事なライバルですから、彼女を頼みますね!」


いつもの口調に戻った山川くんは、連理と握手を交わした。

何年も一緒に仕事しているけど、やっぱり、よく分からない人だ。


「じゃあ、水川さん。色々、頑張って!!」


私は山川くんの背中を見送りながら、ほっと胸を撫で下ろした。


「あいつ………何か知ってんの?」


「えっ?何で?!」


「何となく…怪しい。」


連理は、腕組みをしながら、何か考えているようだった。


「よしっ!!会社ではもっと、イチャイチャしよう!!」


「はぁ?冗談でしょ?」


「昇進が掛かってるんだろ?いいのか?バレても。」


「うっ………。」


そう言われてしまうと、私はぐうの音も出ない。

おとなしく、従うしか術はない。


「Understand?」


得意気なこの瞳が憎らしい。


「アンダー………スタンド。」


この日から、私はまた、気の置けない日々が始まった。


< 71 / 299 >

この作品をシェア

pagetop