Pathological love

ガラッと戸を開けて入ってきたのは、50代位の女の人だった。

化粧もしてなくて、すっぴんの彼女は、キャミの上に着物のようなガウンを羽織っていた。

髪はボサボサでセットはしていなかったけど、肌は白くて綺麗で、恐らく若い頃は凄く綺麗だったんだろうと、容易に想像できた。

勿論、年を取った今もキチンとすればあの写真の様になるのだ。


「いらっしゃい。私が芦屋 京子よ。こんな格好でごめんなさいね。昨日徹夜で仕事してたから、着替えるの面倒臭くて。間宮印刷の水川さんだったかしら?」


「はい!改めまして、間宮印刷 営業一課 主任 水川 令子と申します。お忙しい中、貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございます!本日は宜しくお願い致します!」


一つだけ造りの違う独特のソファーにドカッと座ると、彼女はその上であぐらをかいた。


「堅苦しい挨拶は嫌いよ。私の事は下の名前で。あなたの事も名前で呼んでいいかしら?その方が早く仲良くなれるわ。」


「はい!京子さん!!」


思ったより、ざっくばらんな性格に希望が見えてきた。


(もしかして、結構いい感じかも。)


「奏也(そうや)!令子ちゃんにお茶と、後で食べるから、私用に朝ご飯。甘いものも付けてよ!」


「京子さんが買ってきた物、一気に全部食べるからもう無いですよ。」


さっきまで無表情だった男が、京子さん相手だと、いとも簡単に表情を崩す。


(もしかして…いや、まさかね。)


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