Pathological love
特注の木製ハンガーにジャケットを掛ける。
特注だけあって、掛心地が良く型崩れしなくて、長く愛用している。
パリッと皺一つ無い白衣を代わりに羽織ると、とても気分が良くなった。
「おはようございます。」
「おはよう、白金くん。いつも、クリーニングありがとう。やっぱり綺麗なものはいいね。」
「どうしたんですか先生?いつもと同じですけど?」
事務長の白金くんが、いい香りを部屋中に振り撒きながら入って来ると、テーブルの上にハーブティーを置いた。
「ほんのり甘いリンゴのようなこの香りは、カモミールかな?」
「当りです。」
ティーカップをソーサーから取り上げると、香りがいっそう強くなる。
深呼吸するように、鼻から吸い上げると、リラックスした吐息が不意に漏れた。
「昨日、いつものバーで気になる人と知り合ってね。」
「えっ?」
「また今度会えるのが楽しみで仕方がないんだ。」
「そんなに興味を惹かれる人なんですか?」
「えぇ……私が投げ掛けた言葉で、どうあの人が変わってくるか………クククッ…あぁ、待ち遠しい。」
「………先生、止めてください!」
珍しく声を荒らげる彼女に驚いて、視線を向けると、直ぐにクルッと背を向けてしまった。
「どうしたんですか?」
「そんな風に人を弄ぶなんて、良くないと思います!!相手の方だって気分を害すと思います!」
「ちゃんと、責任は持つ覚悟で話し掛けたんだ。前からあの店で見掛けていて、ずっと、気になってたから。ふざけてる訳じゃないよ?誤解しないで。」
「本気なんですか?」
「ええ、本気です。」