Pathological love
7. home cooking
初めて出向いた日から、私は毎日、芦屋デザイン事務所に通い詰めていた。
赤坂部長からも、許しを得ていたので、とにかく、アシスタントの奏也さんの手伝いから雑用、たまに煮詰まった京子さんの話し相手など、何でもこなしていた。
ただ一つ、料理だけは奏也さんには敵わないし、まず、作れるレパートリーも少なかったため、手は出さないでいた。
とにかく、危ない橋は渡らないように心掛けている毎日。
「おはようございます!間宮印刷の水川です!」
一瞬の沈黙の後、奥から京子さんの声が響いた。
「令子ちゃん、いらっしゃ~い!今、手が離せないから、取り敢えず入ってきて!」
訝しげに、奥の居間に入ると、珍しく京子さんがお盆に料理を乗せて、忙しなく行ったり来たりをしていた。
「京子さん?どうしたんですか?何か気分転換ですか?」
「違うのよ~!奏也が両手を怪我しちゃって………今、ご飯食べさせてたの。」
「えっ?奏也さんが?!大丈夫なんですか?」
「大丈夫です………。」
「うわっ!!」
声のした方向を見ると、誰もいないと思っていたソファーに、奏也さんがブランケットでぐるぐる巻きにされた格好で、横になっていた。
おでこには冷却シートまで貼られている。
「熱もあるんですか?病院は行ったんですか?」
「熱なんて、あるわけ無いじゃありませんか。京子さんが、大袈裟に貼ったんです。剥がそうとすると怒るし………。」