Pathological love
「いえっ!私達はー」
否定しようと一歩踏み出した瞬間、連理が私の腕を引いて、前に出た。
「実はそうなんですよ。私達もいい年なんで、子供が早く欲しくて…でも、彼女は仕事ばかりで……。だから、お願いしてたんです。そしたら、快く快諾して頂きました!!ねっ?令子。」
「っ?!」
開いた口が塞がらない私は、ただ彼の顔と部長の顔を交互に見ることが精一杯だった。
見かねた連理がそっと耳打ちする。
「話を合わせないと、バレるぞ?」
ビクッと彼を見ると、ニヤリと笑っている。
(性格悪っ!!)
「水川くん?どうした?」
「いえ!かっ彼の言う通りです。今度の仕事が上手くいったら、彼の言う事を何でも聞こうと思います!産休取るときは頼みますよ?部長。」
「ははははっ!!分かってるよ!我が社の稼ぎ頭だ。君を守るのは私の仕事だからね。安心して子作りに励んでくれ!その前に、ちゃんと結婚してくれよ?ははははっ!」
(何よこれ?恥ずかし過ぎるじゃない!)
睨んでやろうと、隙を見てみやると、したり顔をしていると思っていた彼の顔は、全く違っていた。
彼の顔は一つも笑うことなく、私をじっと見ている。
何とも言えない彼の表情は、今の私には何を意味しているのか、分からなかった。
少しずつ、でも着実に何かが変わってきていた。
胸の奥底で小さく何かが動いているのを感じる。
「部長!!私に用事じゃないんですか?私達は邪魔者ですから、早く課に戻りましょう。」