Pathological love

玄関を通り抜け、ソファーにバックを置くと、私はバスルームへと向かった。

いつもより早めにお風呂を切り上げて、濡れた頭をタオルで乾かしながら、集めた資料をテーブルに広げる。


「どれも一般的な家庭料理ね。一週間分のメイン料理はここから選んで………っと………お味噌汁もたくさん種類があるのよね~………」


頭を悩ませていると、バックの中から電子音が響いた。


「あっ………もう、そんな時間?」


「…もしもし、お母さん?………私、今日はやっと契約に結び付きそうな道が開けたよ。これさえ成功すれば、昇進間違いなしだから、安心してね?…………そっちは、一人で寂しくない?………………必ず、いい報告するから待っててね。………じゃあね。」


電話を切り、またテーブルの上の資料に手を伸ばそうとしたけれど、何故か急に気が失せてしまった。

原因は分かってる。


「はぁ~…………。」


ソファーにもたれながら、遠巻きに資料を眺めてみる。


(ほら、しっかりしろ………動き出せ………。)



「いいご身分だなぁ~?これから料理を教わるにしては、随分リラックスして、やる気が見えないんですけど?」


突然の声にビックリしてベランダを見ると、部屋着姿の連理が窓から顔を出していた。

真っ白な緩いニットに、黒のエプロンを掛けて、もう準備万端なご様子。


「きっ急に入って来ないでよ!!着替えてたらどうするのよっ!!」


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