Pathological love

(私………泣いてるの?)


「令子?!」


一瞬、何かに迷った様な顔を見せて、彼は傍に座ると、グッと私を抱き締めた。


「………俺はどうしたらいい?泣かれても困る。」


「………分かんない。分かんないけどきっと、嬉し涙だから……大丈……」


私はそのまま、また喋れなくなった。

何故か嬉しくて、ほっとしたのかもしれない。

今までずっと、独りで頑張ってきた。

部下はいるけど、完全に頼ったこともないし、頼らせてくれる様な存在ではなかった。

自分が常に動いて、完璧にこなす、それが私のスタイルだったのに、ちょっと頼んだことに他人がここまでしてくれるなんて思いもよらなかった。


「ありがとう……連理がいてくれて………よかった。」


「一応、婚約者だし………俺が、料理の事で張り切るのはいつもの事だろ?泣くことないだろ………。」


「ここの所、ずっと張り詰めてたから、一気に緩んだのかも………もう大丈夫!平気、平気!」


連理に抱き締められている事実に、急に恥ずかしくなり、私は身体を押し離した。


「そう言えば、さっき初めて連理って、呼んだな?」


「えっ?そうだっけ?」


惚ける私に、彼は悪い笑みを浮かべる。


「もう一回、呼んでみて。」


「なっ何でよ!用もないのに、何で呼ばなきゃいけないの?」


そんな事で、今更恥ずかしくなるなんて、どうかしてると思うのに、からかわれる程どんどん顔に血が上って熱い。


「令子、顔真っ赤~!」


「うっうるさ~い!!」


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