2番目じゃなくて、2度目の恋
1 日曜日、14時、ファミレスで待ち合わせ
お見合いなんて、そんなたいそれたものじゃない。
父が勤める銀行の支店長から、軽い感じで打診されたらしいのだ。
「水戸さんのところ、娘さんまだ独身なんだよね」って。
そんなのほっとけよ、と内心思ったけど。
「それなら紹介したい男がいるんだ」
あのすっとぼけ支店長はそう言ったらしい。
勤続30年の表彰式典が市内でも高級ホテルとして有名な場所で執り行われた。
父はその表彰を受ける立場として招待されており、本来であれば母が同席して厳かなお食事会となるはずだったのだ。
ところが。
田舎に住む祖母の体調が急に悪くなり、母が実家へ少しの間行くことになってしまい、母の代わりに私が父と一緒に表彰式典へ出席しなければならなくなった。
結果として、祖母は感染性の胃腸炎にかかっただけだったから、それは良かった。
その肝心の表彰式典で、私は「高級ディナーがタダで食べれる!ラッキー!」くらいにしか思っておらず、軽い気持ちで出席させてもらったのだ。
一応、小綺麗なワンピースなんかを着て、髪の毛もそれなりに巻いて。
それを見た支店長が何故か私をとても気に入ってくださったらしく、そのあと父にしつこく私のことを聞いてきたという。
「娘さんは何歳なんだ?」「娘さんはどこにお勤めなんだ?」「娘さんに恋人はいるのか?」と。
昔から黙っていればまぁまぁ綺麗だとか、笑っていればまぁまぁ可愛いだとか、親戚の人たちが口を揃えていう微妙な褒め言葉を受けることは多々あった。
とりあえずしゃべったり無表情でいるとあまりいい印象を与えないんだな、ということを同時に受け止めざるを得なかった。
少なからず外れてはいない。
何が原因なのかは分からない。
そんなつもりはなくても、クールな印象を抱かせてしまうらしい。
だから私は基本的に微笑んでいる。
優しく見えるように、褒められるように。
そうすればみんな温かく接してくれるし、親切にしてくれるから。
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