2番目じゃなくて、2度目の恋


入口のそばで立って待っていると、受付の脇にあるエレベーターから降りてきた1人の人影に気がついた。
それは間違いなく、敦史だった。


「佑梨!」


久しぶりに見る敦史の姿。
微笑みながら、私に駆け寄ってくる。
私も彼に笑顔を返した。


「敦史、久しぶり」


涙……、出ない。
笑顔……、ちゃんと作れてる。
胸も……、ドキドキしない。
少しだけ不安になったけど、大丈夫。


「ほんと久しぶりだな。とりあえず移動しながら話そうか。佑梨のお母さんは、外科病棟だから」


そう言って促すように私の半歩前を歩く敦史に、うなずいてついていくことにした。


「いや、最初見た時に佑梨が違う人に見えたよ。髪切ったんだな」


敦史があっけらかんと笑いながらエレベーターに乗り込む。
階数『5』を選んで、パラパラと何人か乗ってきて。
全員乗ったのを確認してから、彼はエレベーターの『閉』ボタンを押した。


「長いの似合ってたのに。もったいない」

「……そうかな。もう長い髪でいる必要が無くなったから切っちゃったの」

「え?なんで?」


キョトンと目を丸くする敦史に、私はただニッコリ微笑みを返しただけで何も言わなかった。


━━━━━だって、もうあなたの好みの女でいる必要が無くなったから。


そう言ったら彼はどう思うかなって試したくなったけど、たぶん敦史は動じない。
「好きな奴でも出来たんだな」って笑うんだ。
彼はそういう人だ。

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