2番目じゃなくて、2度目の恋


ガラッと音を立てて病室のドアを開けると、4人部屋の一角……奥の左側のベッドに母が横になっているのが見えた。


私より先に母が声をかけてくる。


「佑梨!ごめんねぇ、わざわざ仕事早退させちゃって!」

「お母さん……」


骨折した割には、思っていたよりも元気そうに笑っていたからホッとした。
静かに扉を閉めて、他の患者さんたちに会釈して奥へ歩を進める。


「あら?佑梨……」


母が私に手を伸ばしてきた。
その手が私の頬に触れる。


「泣くくらい心配してくれたの?大げさね」

「…………ふふ、元気そうで良かった」


溢れてくる涙を、手の甲で拭いながら母に微笑み返した。









どうやら私の涙腺は、この間から緩み始めたらしい。


去年の秋に泣けなかった分を取り戻すみたいに、この間だけでは足りなかったと言わんばかりに、次から次へと涙が頬を伝う。


この涙の意味を、私は知っている。


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