2番目じゃなくて、2度目の恋
「本当は、好きな人がいた。初めて好きになった人。その人には恋人がいて、俺はずっとずっと片想いだったんだ」
弘人の口から語られる、彼の恋愛。
それは、私が思っていたよりももっと私の恋愛と似ていた。
「俺は彼女が連絡をくれた時だけ会う、都合のいい男だった。それでいいって思うほどに好きで……。俺の恋愛経験は彼女しかいないけど、彼女は最後まで俺の恋人にはなってくれなかった。だから、ちゃんとした恋人が出来たことがないっていうことだけは、本当のことなんだ」
「ずっと、彼女の『2番目』だったってこと?」
「…………そうだね」
うなずいた弘人の目には、一瞬切なさが浮かぶ。
彼のもどかしい気持ちを理解できるのは、きっと同じ体験をしている私だ。
私も彼のような目をしているのかな。
こんなに切なくて、寂しげな。
「佑梨と約束をした、恋人期限の最後の日。11月13日は……、彼女の結婚式なんだ」
そう言って微笑んだ弘人を見て、思わず「え……」と言葉が漏れる。
相手が結婚するということまで一緒だったなんて、偶然の一致とは言え心情を察すると相当辛かったに違いない。
「俺の幼なじみ同士の結婚だから、もちほん俺も招待されてる。出席しなくちゃいけないんだ」
「…………ど、どういうこと?弘人を結婚式に呼ぶなんて、どんな神経なの……」
私が驚いて目を見開くと、彼はなんてことないように肩をすくめた。
「言ったろ?俺の幼なじみ同士の結婚、って。彼女は気まずくても、もう一方はそうじゃない。俺が出席しなかったら逆に疑われる」
「じゃあ……、弘人はその結婚式に行くの?」
「うん。それしかないんだ。だから、その時までにどうしても見栄を張りたくて……俺にも恋人が出来たんだって言いたくて、それなりの人でいいから恋人を作りたかったんだ。……たとえ、偽物だとしても」