2番目じゃなくて、2度目の恋


急にこんな展開になるとは思ってもみなかったから、変な汗をかいてしまいそうで両手で顔を扇ぐ。
そして、慌てて言い訳じみたことを口走った。


「もう自分でもよく分からないの。いつから好きなのかも、キッカケがなんなのかも、何も分からなくて……。でも、好きになっちゃダメって自分に言い聞かせてたから……」

「もう一度聞かせて」


弘人の両手が私の背中に回ってきて、あっという間に彼の肩に顔が埋まる。
くぐもった声で、え?と聞き返すと、


「佑梨の声で、好きって聞かせて」


と囁いた。


「好き……」

「うん。俺も」


ボワっと暖かい何かが胸のあたりを包んだような感覚になった。


この短時間に、何が起こったのか頭がついていってない。
だけど分かることは、弘人は私のことが好きということ。
好きな人の1番になれたということ。


それが、こんなにも奇跡のように感じるなんて。


きっと弘人も同じなのだ。


悲しい涙じゃなくて、嬉し涙がじんわりと滲む。
嬉しくて泣くなんて、そんな経験も初めてだ。


「私の恋愛経験も話したい」


弘人に打ち明けてもらったから、私も言おう。
決心してそう言ったのに、彼からの返事は意外なものだった。


「ううん。聞きたくない」

「ど、どうして!?」

「…………嫉妬しそう。だから言わなくていい」


私は、やっぱりまだ弘人のことを理解しきれていないということが分かった瞬間だった。


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