2番目じゃなくて、2度目の恋
私は敦史のことがずっと好きだった。
小学4年生の時から、ずっと。
そしてそれは中学校に入ってからも高校へ進学してからも、変わることは無かった。
初めてキスを交わしてから、会うたびにキスをしてくる敦史に私は何も言わなかった。
彼に彼女がいることも追求はしなかった。
私を求めてくれることが嬉しくて、彼女になりたいとか、そういう感情は押し殺した。
いつか彼女と別れた時に、「付き合おう」と言ってくれると信じていたから。
そうしていつしか高校生になった私と敦史は、高2の夏に結ばれた。
私は初めてだったけど、敦史はきっと初めてなんかじゃなくて。
緊張して震える手を彼は強く握って、「大丈夫だよ」とささやきながら抱いてくれた。
敦史の隣にはいつも誰か彼女がいて、私はそういう存在にはなれなかった。
それは、高校を卒業して大学生になったあとも、大学を卒業して社会人になったあとも、ずっと同じだった。
私は敦史の『恋人』にはなれなかったのだ。
幼なじみと呼ぶに相応しいほどの長い年月を積み重ねてきた私と敦史。
17年もの間、私は彼を想い続け、いつかは恋人になれると信じ、誰とも付き合わないできた。
彼以外の人と付き合うことは、自分を裏切ることになると思ってしてこなかった。
好きだと言ってくれる人がいても、拒み続けた。
曖昧な関係に終止符を打った昨年の秋から、私は敦史と会っていない。
実家のマンションから引越して一人暮らしを始め、携帯の番号もアドレスも全て変更して、もしも敦史が私のことを訪ねてきても「知らない、出ていった」で通すよう両親にもお願いした。
両親は深く聞いてくることはなく、ただ黙って承諾してくれた。
敦史との思い出は数え切れないほどあるし、今でもまだ色々なことをすぐに思い出せてしまうほどに悲しくなることがある。
それでも、少しずつ前に進まなくちゃ。
自分を少しでも大切にしなくちゃ。
そう思ってここまで来たのだった。