2番目じゃなくて、2度目の恋
私には「付き合う」ということや「恋人になる」ということの定義が分からない。
今までずっと敦史のことが好きで、彼に合わせてきたから。
会いたい時に「会いたい」って言ってもいいのか、声が聞きたい時に電話をしてもいいのか、2人でデートをしたい時に「出かけたい」と言ってもいいのか。
何にも分からない。
この17年間、ひたすら敦史からの行動を待ち続け、自分からはほとんど意思表示をしてこなかった。
会っている時に「好き」と伝えたことはあったけれど、その時付き合っている彼女とは別れてくれないのかとか、そういうことは言えなかった。
そんなことを言えば嫌われるんじゃないかと思ったから。
私が黙々とパスタを食べるので、美鈴が言葉を選びながら問いかけてくる。
「そのナントカさんって人に、また会ってみたいな〜って少しも思わない?」
「思わない」
「誰かと付き合ってみたいな〜とか、いいな〜って思う人は他にいないの?」
「特にいないかな」
「瀬名くんには会いたいって思わないの?」
「………………うん。もう思わない」
会いたい、なんて思っちゃいけない。
会えないのだ。
もう、会ってはいけないのだ。
だからこうして彼から離れた。
「ナントカさんが佑梨を幸せに出来るとは思えないんだよね〜……。出来ることなら他を探すべきだと思うよ」
アイスティーをストローで飲んでから、美鈴はため息混じりにそんなことを言っていた。
ナントカさん。
望月弘人という名前はあるけれど、私にとってはナントカさんでもいいほど彼のことは知らない。
日曜日に会話した時に得た彼の情報なんて、片手があれば足りるほどの少ないものだ。
そんな人と流れで付き合うことになったというのが、これまで敦史を一途に想い続けて破れた私の成れの果てだと笑ってしまいそうになる。
誰にも必要とされない運命なのかも、と。