2番目じゃなくて、2度目の恋
なかなか賑わっているお店の一角で、私は1人ポツンと座っていた。
テーブルには2人分のお冷や。
透明なコップに八分目に注がれている。
水滴が垂れ始めたコップを見下ろしながらため息をついた。
日曜日の真っ昼間。
時刻は14時。
いや、約束の14時は過ぎた。
14時10分といったところ。
相手の指定でこのお店の名前を告げられた時はどうしようかと思った。
普通に名の知れた全国展開のファミレス。
仮にも相手にとっては、心配されてお膳立てしてもらった上での紹介。お見合いもどきなのだ。
それをこんなワンコインでランチ出来ちゃうようなお店で女と会おうとするなんて、どんな人なんだろうか。
事前に知らされているのは名前と年齢のみ。
父の直筆のメモ用紙に、走り書きで書いてあった文字をなんとなく思い出す。
『望月弘人 30歳』
メモ用紙を渡された時、別にメモに残すまででもないいらない情報だと思った。
もちろん口にはしなかったけど。
父の上司である支店長の甥にあたる望月弘人。
噂によると、ううん、噂ってわけじゃなく、支店長の話によると。
彼女いない歴=年齢、らしいのだ。
そういう人って、やっぱりいるんだ。
聞いた時はそれだけしか感想を持たなかった。
おおかた想像はつく。
支店長が私を推薦している姿。
自分の甥っ子が30歳を迎えてもなお独身、おまけに彼女が出来たことが一度もない。
このままではあまりにも可哀相だ。
きっと出会いが無いんだ。
そうだ、それならいい子がいるぞ。
部下の娘さんなんだが、なかなか素敵な子なんだ。
挨拶もしっかり出来るし、朗らかな子だ。
彼女に恋人がいないか確認してみよう、いなければお見合いさせてみよう。
数回しか会ったことはないけれど、支店長の記憶と言えばペラペラよくしゃべる人、ってこと。
よく知りもしない私の情報を適当に話したに違いない。