2番目じゃなくて、2度目の恋
3 ナントカさんと桜並木
望月弘人さんから私の携帯へ連絡が来たのは、初めて彼とファミレスでお見合い(のようなもの)をしてから実に2週間以上空いた時だった。
うまい具合に土日にかぶることなく、平日ど真ん中に並んだ5月のゴールデンウィーク。
その3日間の連休の最終日。
前日の夜は大学時代の友達の結婚式に呼ばれていて、二次会まで参加してお酒もけっこう飲んだというのに、翌日にそれを持ち越すことなくすっきり目覚めていた。
カーテンから漏れ出す明るい日差しで、今日の天気の良さがうかがえる。
お日様の光を全身で浴びようとカーテンを開けた時に、私の携帯が鳴ったのだ。
充電器に繋いでベッドの枕元に置いていた携帯を見やると、誰かからの電話。
画面をよくよく見てみたら、『望月弘人』の文字が表示されていた。
見慣れない名前に面食らったけど、すぐに彼が誰なのかを思い出した。
美鈴がそれらしいあだ名をつけていたな、と。
「ナントカさん」。
得体の知れない、何を考えているのかよく分からない彼にはピッタリの呼び名だ。
私のことなんてとっくに忘れたもんだと思っていたから、連絡が来たことには本当に驚いた。
電話が来ているということは、用事があるってことなんだよね。
じゃあ応答した方がいいのかな。
無視するのもアレだし……。
携帯を充電器から外し、画面に指をすべらせて電話に出た。
「はい」
『おはようございます。望月です』
「おはようございます」
彼の低い声を聞いて、そういえばこの人はこんな声だったけか、とぼんやり2週間前のことを思い返す。
顔も、声も、仕草も、何もかもが曖昧にしか思い出せない。
唯一印象に残っているのは、食べるのがものすごく早いということくらいだった。
確か、サラダとドリアを5分ほどで完食したんだった。