2番目じゃなくて、2度目の恋
とは言えここでお礼のひとつも言わないというのも人としてどうかと感じるので、車を発進させた彼にまずは気持ちを伝える。
「あの、お茶……。ありがとうございます」
「ん?あぁ、うん」
望月さんは聞いてるのか聞いていないのか微妙な返事をして、少しだけ眠そうな目を瞬かせた。
2週間前に会った時よりも、瞼が重そうな感じがするのは眠いから?
だから家で寝ていればよかったのに、と言いたくなったけれど口にはしなかった。
無言が続く車内には小さめのボリュームでラジオが流れていて、地元のローカル番組のDJが明るく進行している声が聞こえてくる。
カーステレオを眺めたり、前方を眺めたり、流れる景色を眺めたり、お茶を飲んだり。
なんとも言えない空気感の中だというのに、私は会話をするつもりもなくて、彼に話しかけることもしなかった。
やがて、暑いくらいの日差しが車に差し込んできて体の左側をジリジリ照りつけるから、日焼け止めでも塗ってくればよかったなぁ、となんとなく思っていたら。
彼の方から声をかけてきた。
「2週間の間、俺のこと思い出した?」
私はグルッと顔を彼の座る運転席へ向けた。
反応しづらくて答えにくい質問を、表情も変えずに私の方を見ることもせずに尋ねてくる。
そんな彼は、やっぱりかなり変わり者なのだろう。
たまに人に言われる「変わり者」。
彼もまた、よく言われると言っていたのを思い出した。