2番目じゃなくて、2度目の恋
あ、ダメだ。
気を抜くと敦史のことを考えてしまう。
彼の笑顔とか、手の温もりとか、私にくれた言葉とか。
事細かに覚えていて、何かの拍子に溢れてきそうになる。
今は思い出しちゃダメ、今は……。
パッと顔を上げて弘人の姿を探した。
気がつけば、さっきまで前の方に見えていたはずの彼のひょっこり突き出た頭がいなくなっていた。
こんなに人が多ければ、やっぱり見失うよね。
誰か他の人のことを考えながら歩くなんて、きっと普通なら許されることじゃないんだ。
例え、私たちが特殊な関係だとしても。
彼がこのままはぐれたことに気づきもしないで、さっき食べたいと言っていた玉こんにゃくのお店に行っていたらそれはそれで笑っちゃうな。
……と、場違いなことを思い描いていたら。
「佑梨」
と呼ぶ声とともに、私の左手が誰かに引かれた。
グイッと人混みから引き抜かれるように、並木道の片隅に体を持っていかれる。
私の手を引いたのは弘人だった。
彼は私が驚いたような顔をしていたからか、首をかしげていた。
「なんで驚いてるの」
「あ……いや……、このままはぐれて玉こんにゃくでも買いに行ったのかと」
「あはは、1人で行くわけないでしょ?」
「そういうものなの?」
「俺ってそこまで薄情に見える?」
そんなことは、と否定する前に、彼は私の手を離すと
「俺たちは本来手も繋いじゃいけないんだから、ちゃんと離れないようにしないとね」
と笑った。