2番目じゃなくて、2度目の恋
目を細めて、満開の桜並木を背景にして微笑む弘人を敦史と重ね合わせてみた。
当たり前だけど、別人だった。
「そうだったね。お互いが虫除けの存在、だったよね」
「うん」
うなずいて再び歩き出した彼の隣を、少し距離を置いて私も歩いた。
高校の時の敦史が……、さっきの弘人のように、私が人混みに紛れてしまっても手を引いて私をつかまえてくれたらどんなに良かっただろう。
自分の左手をそっとぎゅっと握りしめていると、隣で弘人が「あ」と何かを思い出したように私の方を向いてきた。
「俺たちの恋人期間は、11月13日の日曜日で終了ってことでいいかな?」
「半年って言ってたけど、ちょっと過ぎてるよ?」
「ん、ごめん。でもお願いします」
「11月13日って、何かあるの?」
「まぁ、ちょっとね」
含んだような言い方と、曖昧な表現。
彼にとっては説明したくないことであり、答えを濁したい話のようだ。
私に偽恋人になるように言ってきたことと、何か関係があるのだろうか?
まぁ、どうでもいいか。
彼が私の知らないところで何らかの事情を抱えていようがいまいが関係ない。
そんな私の心を見透かすように、弘人はあっけらかんとした様子で付け加えた。
「その間に好きな人が出来たら、いつでも言って」
「大丈夫。出来るわけないから」
「………………佑梨は時々寂しそうな顔をするね」
「勝手に変なこと言わないでよ。寂しくなんかないんだけど」
予想していなかったことを言われたから、思わずきつい口調で言葉を返してしまい我に返る。
まただ。
また、頭を使わずに返事を返してしまった。
ちゃんと言葉を選んで、失礼のないようにしないといけないのに。