2番目じゃなくて、2度目の恋
桜を見に行ってから、私は弘人からは連絡が来なくなるだろうと思っていた。
なにしろ彼は私の本性と呼ぶに相応しい本質的な性格を見抜き、そしてそれを臆することもなく指摘してきたからだ。
まぁ、本人が「嫌われてもいいや~って適当にやっていかないと疲れるよ」って言ってたくらいだから、私に嫌われることくらい問題ないんだろう。
でも仮にも恋人の振りをするようお願いしといてあの言い方は無いでしょ、とあとから突っ込みたくなったけど。
話が逸れてしまったけれど、お花見から1ヶ月経ち6月になった。
結果として、もう連絡が来ないだろうと思っていた弘人からは、普通に週に1回か2週に1回は連絡が来ており、だいたい私が仕事のときだったので夜に食事をして帰る、というパターンになっていた。
可愛くない女、と彼に印象づけたであろうあの出来事を、弘人が蒸し返してくることもなかった。
なんともない会話を楽しみ、食事を楽しむという無難なデート。
1度だけお酒も飲んだ。
私はお酒に強くないけれど、弘人はまぁ強い方のようで。
それなりにたくさん飲んでいたものの酔っ払ういうこともなく、落ち着いた様子だった。
普通の恋人ってどのくらいの頻度で会うのだろう?
いや、恋人以前に疑問がひとつ。
━━━━━人を好きになる瞬間って、どんな時?
小学生の頃に敦史へ抱いていた恋心。
始まりの瞬間は、あまりにも昔のことすぎて思い出せない。
こんな基本的なことも分からないようでは、一生新しい恋なんて見つけられないよね……。
ましてや弘人なんてその対象にもならない。
彼は私の性格ももうだいぶ分かっただろうし、私も彼のようにのらりくらりとしているくせに妙なところが鋭い性格の人は、付き合いづらくてちょっとお断り。
よくそんな人と食事デートできるわね、という美鈴の声が聞こえてきそうだ。
彼とのことは割り切っている。
あくまで父と、父がお世話になっている相原支店長が作ってくれたお見合いの相手。
だから無難にお付き合いしているだけ。
たったそれだけの関係なのだ。