2番目じゃなくて、2度目の恋


「ねぇ、水戸さん。今度の土曜日空いてる?」


ちょうど最後の患者さんが帰ったタイミングで、隣に座っていたひとつ年上の吉川さんが話しかけてきた。


吉川さんは気さくな性格で、際立って綺麗というわけではないけれど美容に興味があるらしく、いつもメイクは完璧にしてくる。
私服も雑誌から抜け出したような鮮やかな色合いの服を着ることが多く、私とは違って友達もたくさんいて、恋愛経験も豊富だ。


今日使用した分のカルテを棚にしまいながら受付内に置いてある卓上カレンダーをチラッと見て、次の土曜日の日にちを確認した。


「特に予定はありませんけど……」

「合コン行かない?1人急に友達がキャンセルしてきちゃって、数合わせで申し訳無いんだけど」

「合コン……」


恋人はいない、と吉川さんに伝えてあるから、だからこそこうやって私を誘ってきたんだと思う。
今までにも2回ほど誘われたことがあった。
その時は実際に予定があったりして断ったんだった。


合コン自体、行ったことがない私。
それを以前彼女に伝えたら、「そんな化石がいまだにいるなんて!」ってビックリしていた。
化石なんて言われると思ってなかったけど。


敦史が私を必要としてくれている間は他の誰も見ないと決めていたから、これまでの合コンの誘いは全て断ってきたのだ。


吉川さんは私を断らせまいと自信満々に人差し指を立てて、グイッと顔を近づけてきた。


「今回はなんと、相手が公務員なの。顔は微妙な人が多いけど、リアルに将来は安定よ」

「…………ふふっ、顔が微妙だなんて。最初に言っちゃうんですか?」


私が思わず吹き出してしまうと、それに釣られて彼女も笑った。


「あとから文句言われても困るから、最初に言っちゃうの」

「あはは、なるほど」


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