2番目じゃなくて、2度目の恋


合コンのお店になっている間接照明が効いたダイニングバーは地下にあって、ちょっと薄暗くて雰囲気がある場所だった。
初めて訪れるお店だったけれど、周りの客層は女性の比率が圧倒的に多い。


吉川さんのお友達が他に3人いて、女性陣5人男性陣5人の計10人の飲み会となった。


あくまで穴埋めとして参加した合コンなので遠慮して一番端の席に座った私は、吉川さん以外男性も女性も初対面のため、正直全く楽しめないでいた。


「どうしよっか。まずは自己紹介でもする?」


という吉川さんの提案で、順番に名前を名乗っていく。


「戸倉です」
「山崎です」
「野口です」
「佐藤です」
「浅野です」


え?戸崎さん?いや、野崎さん?
佐藤さん……ってどの人だっけ。
ん?山ナントカさん?


目の前に座る男性陣5人の顔と名前が一切一致していないというのに、もうこちらの自己紹介の番になってしまう。
とりあえず「水戸です」と名乗ると、他の4人の女性たちも名乗っていった。


「それじゃあ、出会いを祝して乾杯!」


私の席からは一番離れた対角線上に座るナントカさんが先陣を切って乾杯をしてくれたので、手元のビールグラスを向かいに座るナントカさんと合わせた。


あぁ、どうしよう。
1人として名前を覚えていないぞ。
名前を呼んでお話なんて出来やしない。


隣に座る吉川さんをチラリと見てみたものの、彼女は彼女ですでに正面と斜めに座る2人の男性と楽しくおしゃべりを始めている。


開始5分やそこやで私だけが取り残された感じになって、退屈に思えるようになってしまった。

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