2番目じゃなくて、2度目の恋
「ごめん。名前、もう一回教えてもらってもいい?」
正面に座っていたナントカさんが私に声をかけてきたのは、それから程なくしてからだった。
急に話しかけられたので、「え?」と聞き返してしまった。
「一気にさっき自己紹介したから、覚え切れなくて。僕は浅野といいます」
目の前の彼は、たぶん私より年上だと思われる容姿だった。
30代半ばといったところだろうか。
若干お腹が出てきたのかな?という感じの体型だったけれど、まぁ中肉中背の範疇だ。
身長はそんなに高くなさそう。
見た目は正直に言うとストライクゾーンには入ってこない。
髪の毛は短髪の黒髪で、清潔感もある。
だけど……なんだろう。
笑い方が好きになれない。
ちょっとわざとらしいというか。
だからと言ってここで無下にするのもおかしい話だし、さっきの吉川さんの話を思い出した。
「生理的に受け付けない人じゃなければいい」という言葉。
この浅野さんという人は、決して生理的に受け付けないということもない。
それになにより、私と同じで名前を覚え切れずにすんなりともう一度名乗ってもらうように話しかけてきてくれた気遣いはありがたかった。
「水戸です。よろしくお願いします」
いつものように笑顔を作って答えると、浅野さんはホッとしたように微笑んでいた。
その微笑みはキュッと口角を上げているんだけど、どこかぎこちなさみたいなものを感じた。