2番目じゃなくて、2度目の恋
その後2回ほど席替えタイムと称して席を移動することになったけれど、行く先々に浅野さんがいた。
彼は先回りするように私の隣に座り、なんてことない会話を吹っ掛けてくるのだ。
分かりやすいほどに、私への好意が感じ取れる。
そして、嬉しいわけでもなく面倒くさいわけでもなく、でも話は合わないなぁと思いながら私はほとんど彼と2時間話し続けた。
もう飲み会も終盤という頃、浅野さんから核心に迫る質問をされた。
「水戸さんってどのくらい恋人いないの?」
「………………恋人……」
「僕はフラれたばかりなんだ~。だから休みの日はヒマでヒマで……」
「そうなんですね~。何か趣味とか持つといいんじゃないですかね?」
どのくらい恋人がいないのか、という話をうまい具合に逸らし、笑顔を向けて適当にごまかす。
早く帰りたいな~、と思っていたら。
「このあと、少し2人になれないかな?」
と、声をやや低くして私だけに聞こえるように言ってきた。
一瞬、弘人の言葉が思い浮かんだ。
「好みでもない男に言い寄られたらどうするの?」って。
まさにコレのことじゃない。
彼は彼で私を引き止めたくて必死なんだ。
恋人と別れたばかりで寂しくて仕方ないんだ。
作り続けていた笑顔に、綻びが生じそうになる。