2番目じゃなくて、2度目の恋


「俺はタクシー代わりじゃないんだけど」


ため息混じりに文句を言いながらも、私を迎えに来てくれたのは弘人だった。
彼はちょうど仕事終わりだったらしく、私からの連絡を受けて間もなく駆けつけてくれた。


最初から彼に頼ろうと思って電話したわけじゃない。
この失態を誰かに叱ってほしくて、美鈴をはじめ数人の友達に連絡した。
でも週末ということもあって、みんな都合がつかなくて。


結局、辛口で非難されるのは目に見えていたけれど弘人に連絡したのだった。


「何かあったらいつでも連絡して、って言ったのは俺だから仕方ない」


と、彼は来てくれたのだ。


「で?何があったの、人生初の合コンで」


運転席で不機嫌そうにハンドルを握りながら尋ねられて、私は一瞬答えに詰まる。
前方を見ていても、私の様子がおかしいことに気づいたのだろう。
弘人はフッと鼻で笑った。


「まさかほんとに好みでもない男に言い寄られたとか?」

「………………キスされた」

「…………それはそれは、お気の毒に」


車内は暗くて、彼が驚いたのかどうかさえもよく見えなかった。
でも、声だけを聞くと冷静だった。
まるで私がそうなると予想してたみたいに。


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