2番目じゃなくて、2度目の恋
悪くない見た目とは裏腹に、やっぱり女性が「この人とは付き合いたくないわ」って思うような何かがあるんじゃないだろうか。
「いくつか聞いてもいいですか?」
私が尋ねると、彼はコクンとうなずいた。
ちょうどいいタイミングなのかどうかは分からないけれど、注文していたAランチがテーブルに届けられる。
シーザーサラダにフォークを突っ込む彼の姿を眺めながら、私は思いついた質問を口にした。
「望月さんって、アイドルとかアニメとかに興味あります?だから一般の女の人は無理とか、そういうのなのかなって」
「アイドルもアニメも興味は全く無い」
「へ、変な性癖があるとかじゃなくて?」
「普通だと思う」
「例えば男性しか愛せない、とか……」
「付き合うのも抱くのも女がいい。…………顔に似合わず変な想像してるんだね」
う、うぅーん……。
どうやら本当に至って普通の30歳の男のようだ。
私が思い描いていた残念要素は特に無い。
じゃあ、どうしてこの人は彼女いない歴=年齢なのか。
あぁ、でも。
私も彼に対して似たようなことを言ってしまったんだと思い出す。
誰かを好きになったことなんて一度も無い。
だから好きな人もいない。
恋をするのが面倒だ。
それらは嘘だった。
ひとつだけ本当のことを答えたのは、誰かと付き合ったことがない、ということだけだ。
消し去りたいと願ってやまない『あの人』の記憶が蘇りそうになって、胸が苦しくなった。
シーザーサラダをパクパク食べながら、私の目をじっと見て彼が首をかしげる。
「水戸さんの方が不思議だけどね、俺は。女性が恋愛を面倒って言うのなんて初めて聞いた」
「変わり者、ってよく言われるんです」
「それも俺と一緒だね」
そう言って笑った彼の目は、少しだけ寂しさが垣間見えた。
それがどういうことを意味するのかは分からないし、追求するつもりもなかった。