2番目じゃなくて、2度目の恋
地下鉄に乗っていくつか駅を通り過ぎる。
台原駅で降りて、コンビニに寄った。
ポテトサラダとサンドイッチを購入する。
残業で遅くなった日は無理して自炊するのはやめて、このようにコンビニやスーパーで夕食を買って帰ることが多々あった。
暗い夜道を歩きながら、携帯で美鈴に電話をかけた。
4回めのコールの途中で美鈴の明るい声が聞こえた。
『あ、佑梨?ごめーん、仕事中だった?』
「大丈夫だよ。もう帰り道だから」
『旦那が飲み会でさ、テレビもつまんないし話し相手が欲しくって』
時々何かこれといった用は無くても、私をこうして気にかけてくれる存在がいるって嬉しいことだ。
開けっ広げに明るいわけでもなく、社交性に優れているわけでもなく、私はどうやら周りにはわりと静かな印象を与えてしまっているみたいで。
おしゃべりな方ではないことは自負しているけど、暗くはないと思いたい。
美鈴のとりとめのない話を聞いて相槌を打ちながらアパートまで歩く。
その気は無くても所々で笑いを誘うような話をしてくれるので、大きな声にならない程度に笑った。
アパートに着いて、部屋の鍵を開けて中へ入る。
電気をつけて靴を脱いで、狭いキッチンと通路を抜けてリビングへ。
8畳間のフローリングにぺたんと座って、買ってきたコンビニの袋をテーブルに乗せた。
それまで旦那さんとののろけ話や近所の小うるさいオバサンの話をしていた美鈴が、そういえば、と思い出したように話題を逸らした。
『あのナントカさんとはどうなったの?相変わらず続けてるの?付き合ってるフリってやつ』
「え?…………あぁ、うん。まぁ」
『なんか心配だわ~。襲われたりしてない?』
「ちっとも」
それならいいんだけど、と胸を撫で下ろして安心している美鈴をよそに、私は笑いそうになってしまってこらえるのに一苦労だった。
あの人は何を考えているのか分からない。
分からないけど、とりあえずそういった盛った性欲みたいなものは感じない。
むしろ同じ境遇の人がいて、楽しんでいるような気さえした。