2番目じゃなくて、2度目の恋
私はこの世界の数え切れないほどの人口の中の、たった一人でしかない。
何十億分の一。
日本だけで考えたって、一億ちょっとの中の一人。
こうして細々とサンドイッチを食べている間にも他の人たちはそれぞれの生活をしていて、そしてクローズアップなどされない個々の恋愛を、みんな十人十色で楽しんでいる。
もちろん、私みたいに一言では答えられない恋愛をしている人もいるわけで……。
お風呂に浸かりながら、もくもく目の前で立ち上る湯気を顔中に浴びる。
白いもやの中で、キュッと目をつぶった。
敦史は今頃、何をしているのだろう。
奥さんの琴美さんとは、うまくいってるのかな。
休みの日なんかは2人で出掛けたりしているのかな。
私のことは、もう思い出したりもしないかな。
私は敦史の何だったんだろう……。
彼女に会えないときに手っ取り早く会える、都合のいい女だよね。
甘い言葉ひとつでしばらく生きていけるような手軽な女だったよね。
でも私にとっては、彼は全てだった。
全てを捧げた存在だった。
彼のためなら何もかもなげうってでも駆けつけたいと思っていた。
彼が望むことならなんでもしたいと思っていた。
だから私は『2番目』だったんだ。
彼が望んだから『2番目』になったんだ。