2番目じゃなくて、2度目の恋


弘人はなんて言うだろう。
その言葉を私が言ったら、どんな風に思うだろう。
面倒くさいって思うかな。
彼なら思うかもな。


私がなかなか答えないからか、弘人が不思議そうな声で催促してくる。


『佑梨?』

「…………………………ねぇ、弘人」

『うん?』


断ってね。
一思いに、突き放してね。
甘えるなと罵っても構わない。


お願い、断って。


しんとした部屋の中で、走馬灯のように駆け巡る去年の秋のこと。
敦史の冷たい『無理』という言葉が耳から離れてくれない。
消えないなら、塗りつぶしてしまえばいい。


「会いたいって言ったら、今すぐ会いに来てくれる?」


仮初めの恋人という関係だから、こんなこと言ったって来てくれるわけない。
何言ってるの、って呆れたように笑う弘人の顔が思い浮かぶ。
いつだって彼は、どこか冷めてるような笑顔を見せていたから。


だからすぐに返してきた弘人の返事に驚いた。


『待ってて』


え?と聞き返したときには、ブツッと電話が切れた音がした。



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