2番目じゃなくて、2度目の恋


携帯を耳に当てたまま、しばらく茫然とベッドに腰かけていた。
涙なんかいつの間にか引っ込んでいて、代わりに濡れた髪の毛から水滴が滴る。


「待ってて」?
今から来るの?本当に?
そんな簡単に会いに来てくれるの?


こんなはずじゃなかった。
予想と違う反応をされて、止めることも出来なかった。


とりあえず髪の毛をドライヤーで急いで乾かす。
電源を入れている限り止まることのないドライヤー音をバックに、息が詰まりそうな数十分を過ごした。


やがて、床に座り込んだ私の耳に、携帯の着信音が聞こえてきた。
無機質な着信音は静かな部屋で高らかに鳴り響いていて。
戸惑いながら携帯の画面を見ると、弘人からの着信だった。


「もしもし?」と、声が震えているのを悟られないように電話に出る。
すると、弘人の冷静な声。


『着いた。何号室?』

「あ、あの……。ほんとに来たの?」

『呼んだのはそっちでしょ。何号室?』

「105号室」


待って、待って、待って。
この部屋には両親以外入れたこともないし、男性を上げるつもりはない。


慌ててリビングを飛び出して、キッチンを通り抜けて玄関へ行った。
チェーンを外して鍵を開ける。
ドアを開くと、湿気を含んだ生ぬるい風が中へ吹き込んできた。


ほんの少し引きずるようなザッザッという足音が近づいてきて、まだお互い顔も合わせていないというのに


「こんばんは~」


という弘人の声が聞こえた。


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