2番目じゃなくて、2度目の恋
このままじゃ文字通りのプラトニックな関係になりそうで、ちょっと怖い。
肉体関係は無くても、お互いの存在があって理解し合える間柄で、そして会うだけで心が満たされていく。
自分は一人じゃない。
自分だけが不幸なんじゃない。
そう思うことのできる唯一の人。
約束の11月13日までまだまだある。
その間になんらかの過ちが起こって彼女と関係を持つなんてことになったら、それこそ虚しいことはない。
なにしろお互いにまだ好きな人を忘れられていない。
それなのに彼女を抱いたら、また俺は『2番目』になる。
それは彼女も同様だ。
2か月前には仮面で覆われていた彼女の顔は、今ではすっかり素顔だ。
作られたような笑顔を浮かべて愛想のいい振りをする彼女はどこにもいない。
強がりで、意地っ張りで、寂しがり屋で、そして脆くて弱い。
彼女を『偽恋人』に仕立てて利用しようとしている俺は、一体なんなのだろう。
そんなことをして何になるんだろう。
もうこんなことはやめようか。
この関係は解消しようか。
沙織の結婚式で、彼女に「まだ引きずってるよ」と伝えてやろうか。
いっそのこと佑梨を心から好きになれたらいいのに。
沙織のことなんて思い出せないくらいに、彼女を愛せたらいいのに。
出会い方もタイミングも、全部悪かったとしか言いようがない。
そのへんの街角で出会うとか、何かの拍子に偶然出会えていたなら良かったのに。