2番目じゃなくて、2度目の恋


「そのへんは安心して。手を繋ぐ気も無いしキスする気も無いから。時々会うだけ。お互いが虫除けの存在ってだけ」

「もしも他に好きな人が出来たら?」

「その時点で関係は終了」


けっこうな常識外れの話だというのに、彼はさもまともなことを言っているかのように振舞ってくる。
こういう訳の分からない人って、学生時代は流してこれたけど大人になるとそうもいかない。


ここで冷たく接して彼をお店に残したまま帰ってもいい。
でも、それをしてしまった場合。
紹介してくれた相原支店長の面子も丸潰れになるし、父の立場もどうなることか。
まぁ、彼がそこまで頭がいいかどうかも謎だけど。


「ここに来たのが私じゃなくても同じ提案をしてましたか?」


どう出るか気になって、なかなか意地の悪い問いを彼にぶつけてみる。
さぁ、なんて答える?


試すような私の視線に気づいたのか、彼はドリアを食べる手を止めて目を細めた。
気を悪くしたような顔ではない。
答えを考えているのか、それとも私を面倒は女だと思っているのか。


彼が言ってきた言葉は、予想していたよりもずっと曖昧でふんわりしたものだった。


「どうかな。見た目と振る舞いがまぁまぁ好みだったら提案するつもりではいたけど」


それって遠まわしに私の見た目と振る舞いがそれなりに好みだったってこと?
嘘くさい。
この人が言うことは大抵嘘くさい。


「人の好みってそれぞれだからどうにも出来ないけど、もしもあなたが俺を生理的に受け付けないっていうんなら恋人になるのはやめる。そこまで無理強いはしない」

「い、いえ、生理的に受け付けないなんて、そんなことはないです……」


口を開けば極端なことを言ってくる。
毛むくじゃらのこ汚い人が現れたならまだしも、普通に清潔感があってスッキリした体格であるならどちらかと言えば私だって好みの方だ。
顔立ちも悪くないし。

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